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事業開始に要する資金について


一般貨物自動車運送事業経営許可申請(運送業許可申請)許可基準は貨物自動車運送事業法で下記の通り定められています。

(許可の基準)
第6条 国土交通大臣は、第三条の許可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、同条の許可をしてはならない。
1 その事業の計画が過労運転の防止、事業用自動車の安全性その他輸送の安全を確保するため適切なものであること。
2 前号に掲げるもののほか、事業用自動車の数、自動車車庫の規模その他の国土交通省令で定める事項に関し、その事業を継続して遂行するために適切な計画を有するものであること。
3 その事業を自ら適確に、かつ、継続して遂行するに足る経済的基礎及びその他の能力を有するものであること。
4 特別積合せ貨物運送に係るものにあっては、事業場における必要な積卸施設の保有及び管理、事業用自動車の運転者の乗務の管理、積合せ貨物に係る紛失等の事故の防止その他特別積合せ貨物運送を安全かつ確実に実施するため特に必要となる事項に関し適切な計画を有するものであること

今回は3の“その事業を自ら適確に、かつ、継続して遂行するに足る経済的基礎及びその他の能力を有するものであること。”を解説していきます。(九州運輸局の場合)

具体的には申請時に“事業開始に要する資金及び調達方法”・“残高証明書”を添付書類として提出します。
“事業開始に要する資金及び調達方法”には資金計画を見積して記載していく事になります。

資金計画の基準は下記の通りとなります。

1 所要資金の見積りが適切なものであること。
2 所要資金の調達に十分な裏付けがあること、自己資金が所要資金に相当する金
額以上であること等資金計画が適切であること。
3 自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていること。

“1所要資金の見積りが適切なものであること。”について注意するべきところは給与の見積が
最低賃金を下回らないように計算します。
法定福利費の計算も法定の事業主負担率で計算する事になります。
車両費は購入であれば売買契約書に記載されている金額、リースである場合は
リース契約書に記載されている金額と矛盾があってはなりません。

施設購入・使用料についても同様ですし、施設賦課税・保険料(自賠責保険料)については
法定金額通りに記載します。
登録免許税は120,000円固定です。(新規申請の場合、譲渡譲受では必要ありません。)

これ以外の事項については事業計画に沿って事業者様の判断で見積していく事になります。

最終的に“事業開始に要する資金の合計”が確定したら、その金額を超える金融機関発行の残高証明を用意し、
管轄運輸支局に申請書類を提出することになります。

申請時に添付する残高証明については九州運輸局管轄においては申請日前の1週間以内に発行されたものであればOKです。
ごく稀に残高証明では無く通帳の写しを提出しようとされる方がいらっしゃいますが、
それは違いますのでお気を付け下さい。

一番注意していただきたいのが“見積間違い”です。
資金計画の見積は申請者側で行うものです、仮に申請時に提出する資金計画が間違っていたならばどうなるでしょう?

申請書類提出時に支局で見積の間違いを指摘してくれる場合があります、この場合は幸運と言えます。
支局は必要書類が揃っていれば申請を受理します、実際に審査をするのは地方運輸局だからです。
申請の段階で間違いを指摘してくれるのは、支局の担当者が善意でチェックしてくれているのです。
そのような担当者に当れば良いのですが、チェックしてくれない担当者もいます。
その場合は審査段階で間違いが発覚します。

申請

法令試験合格

審査←この段階で見積間違いが発覚

審査段階で見積間違いが発覚した場合、自己資金額内(残高証明書の金額)での変更補正をしなければなりません。
極端な例ですが、仮に自己資金が1000万円で見積金額も1000万円だったとします、
ここで自賠責保険金額、重量税金額の計算間違いが発覚し、見積り金額が1万円増えたとします。
すると自己資金1000万円、見積金額1001万円になってしまいます。
この状態になってしまうと、申請取下げです。
「1万円口座に入金すればいいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、
資金計画の基準3を思い出して下さい。

3 自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていること。

間違いが発覚した時点で口座入金したとしても基準に抵触するため、申請取下げとなるのです。

実際には1万円位であれば他の項目を調整して帳尻を合わせる事で何とかなりますが、原則論としてお話ししました。
自己資金は見積金額に比べて多めに用意しておきましょう。

これは他の方から聞いたお話しなのですが、車両費の計上を忘れてしまい、その見積金額に合わせて自己資金を確保して申請したところ、見積間違いが審査段階で発覚してしまったとの話を聞きました。
おそらく補正が必要な金額はかなり大きな額になると思います。
自己資金額が足りなければ申請取下げになるので、役員法令試験の合格も無駄になります。

資金計画を立てる際には自己資金に余裕を持った計画を立て、漏れがないかもチェックを怠らないようにしましょう。

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