ブログ

遠隔点呼について


一般貨物自動車運送事業(運送業)者は、運行の安全を確保するため、事業用自動車の乗務前、乗務後の運転者に対して、原則対面による点呼を行うこととなっています。
しかし、用途地域の関係で営業所と車庫が離れている場合もあると思います。
この場合は点呼のやり方が2通りあります。

1.運行管理者が車庫に出向き運転者の点呼を実施した後、乗務を開始する。
2.運転者が車庫にて日常点検を実施した後、営業所へ移動し点呼を実施した後、車庫へ戻り乗務を開始する

2だと運転者の負担が大きくなりますので、1を選択する事が多くなると思います。
1であっても営業所と車庫の距離が近ければ良いのですが、営業所を政令指定都市に設置する場合の車庫との上限距離(10キロメートル)の場合であれば毎日の点呼は大変です。

従来より、カメラやモニターを用いて点呼を行う「IT点呼」が実施できますが、いずれも、輸送の安全及確保に関する取組が優良であると認められる営業所(Gマーク取得営業所)に限られたものでしたが、令和4年4月1日より「使用する機器・システムの要件」、「実施する施設・環境の要件」及び「運用上の遵守事項」を設定することで、これらの要件を満足する営業所において、営業所の優良性に関わらず、遠隔拠点間の点呼を実施可能とする遠隔点呼制度が開始されました。

遠隔拠点間の点呼とは下記の通りとなります。
*国土交通省パンフを基にしています

営業所内
 A営業所と車庫間
 B車庫と車庫間(営業所に複数の車庫がある場合)

営業所等間等*業種が異なる営業所間等
*一般貨物自動車運送事業とタクシー事業者営業所間など)での実施はできません。

 C営業所と他の営業所間
 D営業所と他の営業所の車庫間
 E営業所の車庫と他の営業所の車庫間
 F営業所とグループ企業の営業所間
 G営業所とグループ企業の車庫間
 H営業所の車庫とグループ企業の営業所の車庫間

Gマークを取らなくても上記の点呼が実施できますので運行管理者・運転者の負担を大幅に軽減する事ができます。

遠隔点呼を行うには下記の要件を満たす必要があります。

◎機器・システム要件

1.カメラ・モニター等 を通じ、遠隔点呼実施営業所等の 運行管理者等が 、被遠隔点呼実施営業所等の 運転者の顔の表情、全身 酒気帯びの有無、疾病、疲労、睡眠不足等の状況を随時 明瞭に確認できる機能を有すること 。

カメラ・モニターの推奨スペック(推奨であり、必須ではありません。)
カメラ
 画素数:200万画素以上
 フレームレート:30fps以上
モニター
 サイズ:16インチ以上
 解像度:1920×1080ピクセル以上

2.アルコール検知器の測定結果を自動的に記録及び保存するとともに、遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が当該 測定結果を直ちに確認できる機能を有する こと 。

3.事前に登録された運行管理者等以外の者が遠隔 点呼を行うことができないよう、個人を確実に識別できる生体認証機能を有すること。

生体認証機能の例:顔認証・静脈認証・虹彩認証等

4.事前に登録された運転者以外の者が遠隔点呼を受けることができないよう、個人を確実に識別できる生体認証機能を有すること。

生体認証機能の例:顔認証・静脈認証・虹彩認証等

なお、運転者は乗務割に基づいて認証されることが望ましい。

5.遠隔点呼に必要な以下の情報が遠隔点呼を行う営業所等間で共有され、遠隔点呼時に 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が確認できる機能を有すること。
(1) 日常の健康状態
(2) 労働時間
(3) 指導監督の記録
(4) 運行に要する携行品
(5) 運転者台帳又は乗務員台帳の内容
(6) 過去の点呼記録
(7) 車両の整備状況

6. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が、被遠隔点呼実施営業所等の運転者の疾病、疲労、睡眠不足等の状況を、常時と比較して確認できる機能を有すること。

7. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が、運行に使用する車両の日常点検の確認結果を確認できる機能を有すること 。

8. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が、遠隔点呼実施営業所等の運転者に伝達すべき事項を確認できる機能を有すること 。

9.遠隔点呼を受けた運転者ごとに、次に掲げる点呼結果が電磁的方法(データとして保存)により記録され、遠隔点呼を行う営業所等間で共有できる機能を有すること。また、その記録は1年間保持されること 。

(1) 乗務前遠隔点呼
イ. 遠隔点呼実施者名
ロ. 運転者名
ハ. 運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
ニ. 点呼 日時
ホ. 点呼方法
ヘ. 運転者の アルコール検知器の 測定結果 及び酒気帯びの確認結果
ト. 運転者のアルコール検知器使用時の静止画又は動画
チ. 運転者の疾病、疲労、睡眠不足等の状況に関する確認結果
リ. 日常点検の確認結果
ヌ. 指示事項
ル. 運行管理者が乗務不可と判断した場合は、乗務不可と判断した理由及び代替措置の内容
ヲ. その他必要な事項

(2) 乗務後遠隔点呼
イ. 遠隔点呼実施者名
ロ. 運転者名
ハ. 運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記
号、番号等
ニ. 点呼日時
ホ. 点呼方法
ヘ. 運転者のアルコール検知器の測定結果及び酒気帯びの確認結果
ト. 運転者のアルコール検知器使用時の静止画又は動画
チ. 自動車、道路及び運行の状況
リ. 交替運転者に対する通告
ヌ. その他必要な事項

10. 遠隔点呼機器の故障が発生した際、故障発生日時及び故障内容が電磁的方法(データとして保存)により記録される機能を有すること。また、その記録は1年間保持されること。

11. 電磁的方法(データとして保存)で記録され 遠隔点呼結果及び遠隔点呼機器の故障記録の修正及び消去ができないこと、又は修正された場合に修正前の情報が遠隔点呼結果に残り消去できないこと。

12. 電磁的方法で記録された遠隔点呼結果(9.(1)ト.及び (2) ト.を除く)及び遠隔点呼機器の故障記録が、機器・システムで保存された内部構造のまま、一括でCSV形式の電磁的記録として出力できる機能を有すること。

◎施設・環境要件

遠隔点呼が行われる場所が満たすべき施設・環境要件は、次のとおりとする。
1. カメラ、モニター等を通じ、遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が、被遠隔点呼実施営業所等の運転者の顔の表情、全身、酒気帯びの有無、疾病、疲労、睡眠不足等の状況を随時明瞭に確認できる環境照度が確保されていること。

被遠隔点呼実施営業所等の運転者の顔とカメラの間の照度: 500 ルクス程度を推奨。

2. 被遠隔点呼実施営業所等の運転者の全身及びアルコール検知器の使用 時の状況が確認できるよう、被遠隔点呼実施営業所等の点呼場所の天井等に監視カメラ等を備え、遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等が必要に応じ映像を確認できること。
3. 遠隔点呼が途絶しないように必要な通信環境を備えていること。

4. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等と被遠隔点呼実施営業所等の運転者の対話が妨げられることのないよう、必要な通話環境が確保されていること 。

上記要件を満たした上で、下表に定める遠隔点呼を開始しようとする予定月に応じた提出期限までに、遠隔点呼営業所・被遠隔点呼営業所を管轄する運輸支局長等に申請書を提出し承認を受ければ遠隔点呼を開始する事ができます。

遠隔点呼を行う上で遵守しなければならない事項は下記の通りです。

1. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等は、地理情報や道路交通情報等、業務を遂行するために必要な情報を有すること。

2. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等は、面識のない運転者に対し遠隔点呼を行う場合は、あらかじめ運転者と対面又はオンラインで面談する機会を設け、遠隔点呼を受ける運転者の顔の表情、健康状態及び適性診断結果その他の遠隔点呼を行うために必要な事項について確認すること。

3. 遠隔点呼実施営業所等の 運行管理者等は、遠隔点呼を遺漏なく行うため、運行中の車両位置の把握に努めること。
車両位置の把握手段の例として、GPS等による車両位置管理システムの活用等が挙げられる。

4. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等は、被遠隔点呼実施営業所等の 運転者の携行品の保持状況又は返却状況を確認すること。確認手段の例として、監視カメラ等による携行品置き場の状況確認、機器・システムによる携行品の有無検出等が挙げられる。

5. 遠隔点呼実施営業所等の運行管理者は、遠隔点呼により運転者が乗務することができないと判断した場合は、直ちに被遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等に連絡すること。
また、被遠隔点呼実施営業所等は、交替運転者を手配する等の代替措置を講じることができる体制を整えること 。

6. 機器の故障等により遠隔点呼を行うことが困難になった場合に、被遠隔点呼実施営業所等の運行管理者等による対面点呼又は当該被遠隔点呼実施営業所等で実施が認められている点呼を行うことができる体制を整えること 。

7. グループ企業との間で遠隔点呼を行う場合は、必要に応じ、遠隔点呼に必要な情報の取扱い等に係る契約を締結 すること 。

8. 運行管理者等及び運転者の認証に必要な生体情報、運転者の体温や血圧等の個人情報の扱いについて、あらかじめ事業者が対象者から同意を得ること。

9. 事業者は、遠隔点呼の実施に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規程に明記するとともに、運行管理者や運転者等の関係者に周知すること。

このように遠隔点呼を行うには承認を得てからも遵守事項に関する帳票類の整備(例:個人情報取り扱いの同意書、運行管理規程の改訂等)が必要になってきます。

遠隔点呼が行えるようになると、運行管理者・運転者の負担を大幅に軽減する事ができますし、天候・渋滞等による点呼実施の遅れ等も防ぐことができます。

遠隔点呼をご検討の事業者様は、是非ご相談下さい。

”>遠隔点呼について(2)”もご覧下さい。

運送業の許可申請・認可申請・届出・法令試験対策・巡回指導、監査対応は
水澤行政書士事務所にご相談下さい!

各種指定申請や許認可、法人設立後の事などご不明な点はお気軽にお問い合わせください。

関連記事

法令試験対策講座(九州運輸局実施分)を開始します。

続きを読む

令和5年5月17日実施分 法令試験について(7)

続きを読む